川越で国登録有形文化財を見て回って、意外とよく知らなかった建物の平と妻、梁と桁、切妻造と寄棟造の違いを学ぶ
小江戸川越として観光地となってきている川越に、国登録有形文化財である建物を見に行きました。
↓本川越駅から北東方面にすぐのところ、左に写っているのが「旧鏡山酒造明治蔵」です。
川越市の産業観光館「小江戸蔵里」おみやげ処となっており、新築かとちょっと興ざめするほどにきれいに改修されています。
元の建物は、明治時代の土蔵造2階一部平屋建、瓦葺、建築面積418㎡で、南北棟の切妻造妻入で、桁行21m梁間20mです。
実は用語がよくわかっていないので調べてみたのですが、建物の長辺側、屋根の最頂部である「棟(大棟)」と平行な面を「平(ひら)」といい、短辺側、屋根の棟(大棟)と直角な面を「妻(つま)」といいます、
正面出入口が平側にあるものが「平入」、妻側にあるものが「妻入」です。
↑右にあるのは「旧鏡山酒造大正蔵」で、同じく小江戸蔵里まかない処(レストラン)となっていますが、建物は大正時代の土蔵造2階一部平屋建、瓦葺、建築面積304㎡です。
切妻造で、桁行22m梁間14mです。
↑奥に小さく見えているのは、「旧鏡山酒造昭和蔵」で、小江戸蔵里くら市場(地場野菜、総菜の物販)ですが、1931年(昭和6年)の土蔵造2階建、瓦葺、建築面積231㎡の建築物です。
東西棟で桁行25m梁間9.1mの切妻造です。
「桁(けた)」は建物最上部の大棟に対して平行方向(平側)にある水平材で、その長さを「桁行(けたゆき)」といい、「梁(はり)」は大棟や桁に対して直行方向((妻側)に掛かる水平材で、その長さを「梁間(はりま)」といいます。
↑大正浪漫夢通りを少し北に向かうと、川越商工会議所がありますが、ここは「旧武州銀行川越支店」で1928年(昭和3年)の建築物で、鉄筋コンクリート造地下1階地上2階建,建築面積566㎡です。
外観はドーリス式の列柱を配した重厚な構え、全体の意匠はルネッサンス・リバイバル様式です。
バロック風の装飾を付けた特徴的な出入口を設けるなど,時代の特徴を伝える銀行建築の一つといいます。
↑少し東に行くと、「日本聖公会川越キリスト教会礼拝堂」があります。
1921年(大正10年)の煉瓦造平屋建、スレート葺、建築面積138㎡、塔屋付の建物です。
立教大学新築のため来日したW.ウィルソンの設計により建設されたといい、確かに池袋でも見たことのあるような外観です。
東西に細長い切妻造・平屋建で,外壁煉瓦造,内部は挟み組み式の小屋組を見せ,尖塔アーチの縦長窓や控壁にゴシック様式細部を備えているそうです。
続いては、観光地である蔵が立ち並ぶ一番街通り沿いにある目立つ建物です。
↑「旧八十五銀行本店本館」で、現在は埼玉りそな銀行川越支店です。
1918年(大正7年)の鉄骨鉄筋コンクリート造3階建塔屋・金庫室付、建築面積291㎡の建築物です。
ネオルネサンスリバイバル、サラセン風など各種様式を折衷的に用いた洋風銀行建築で、設計は保岡勝也,施工は印藤順造です。
塔屋を八角形の断面でドーム屋根となっています。
北側ら見ると、後方の部分は壁面の色も異なっており、意匠の連続性には気を遣いつつ、後に増築した部分のようですが、屋上の看板はどうにかならないのでしょうか。
↑メインの一番街通りから東の路地にはいったところにある「太陽軒」で、ここはレストランとして営業している、1929年(昭和4年)頃の木造2階建、スレート葺、建築面積154㎡の建築物です。
関東大震災後の復興商業建築の雰囲気をよく伝えており、寄棟造,スレート葺の木造2階建で,軒をやや深く突出させて屋根を隠したつくりとなっています。
隅切りの玄関,玄関上部の円形庇,2階の尖頭隅窓,独特の柱頭を持つ隅柱など,東南角部の表現主義的造形意匠に特徴といいます。
「切妻造」は屋根の最頂部の棟(大棟)から二つの山形の形状をした屋根やその建物をいい、一方、「寄棟造」は、四方に傾斜する屋根やその建物をいいます。
↑その少し北にある「旧湯宮釣具店」で、現在は手打ちそば百丈となっています。
1934年(昭和9年)以前の建物で、木造3階建、鉄板葺、建築面積55㎡です。
木造3階建て店舗併用住宅で,昭和初期建設の看板建築で、銅板貼りの壁面は破目地で,隅部を柱型風とし,各階の境に軒蛇腹を廻しています。
交通量の多い交差点の角に立地しており、さらに逆光だったため、ちょうどいい位置からの写真が撮れませんでした。
2階正面のエジプト風半円付柱,それぞれ意匠を変えたペジメント風の庇など,多彩な様式細部を巧みにまとめているといいます。
この日は、本川越駅前からシェアサイクルを利用しました。
「川越市自転車シェアリング」は、11か所のサイクルポートから自転車を借りて乗り、どこに返してもいいという、近頃はやりのシェアサイクルシステムです。
この大きな特長は、40分以内に返却すれば、1日に何度利用しても200円しか掛からないことです。
都心部や横浜、観光地も含め、シェアサイクルは多くなっていますが、この価格設定はいいです、他にも波及してもらいものです。
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