大磯にある日本戦後史に足跡を残した旧吉田茂邸跡地の公園

戦後、１９５１年（昭和２６年）サンフランシスコ講和条約や日米安全保障条約を締結した時の吉田茂首相の邸宅は、神奈川県大磯町にありました。

昭和１９年から、生涯を閉じる昭和４２年までを過ごしたそうです。

ここは、神奈川県立大磯城山公園の一部となっています。

相模湾沿岸地域一帯は、明治期から別荘地・保養地があり、特に大磯中心部一帯は、旧吉田邸をはじめとして、大規模でかつ著名人が構えた住宅・庭園が連なっています。

海沿いですが、崖のある高低差のある地形です。

↓この内門は、サンフランシスコ講和条約を記念して建てられたため、別名「講和条約門」とも言われています。

また、兜の形状に似ているところから、「兜門」とも呼ばれていますが、京都裏千家の表門の写しといわれています。↓

昭和３６年頃に完成した日本庭園は、中心となる心字池を邸宅の正面に配置した、池泉廻遊式の庭園です。↓

庭園設計者である中島健は、数奇屋建築の本邸との調和や花を愛した吉田茂の嗜好をふまえ、さまざまな草花やツツジ類、ウメなどが多く取り入れられ、色彩豊かな庭造りをおこなったそうです。

旧吉田茂邸は没後、西武鉄道株式会社へ売却され、大磯プリンスホテルの別館として利用されていました。

平成１６年頃より、地元で保存の機運が高まり、神奈川県や大磯町により歴史文化遺産として保全・活用が検討され、隣接する「県立大磯城山公園の拡大区域」として、県が整備する方向性が出されました。

しかし、その計画検討の最中、平成２１年３月、本邸が火災で焼失してしまいました。

↑右奥に本邸がありました。

消失を免れた日本庭園や歴史的資源（兜門・七賢堂など）、そして大磯丘陵の貴重な緑地を保存活用するため、公園の拡大区域として、平成２１年７月に都市計画の位置付け がなされました。

その後、「旧吉田茂邸地区」の事業として県が公園整備を行いましたが、焼失してしまった旧本邸は、どうするのでしょうか。

旧吉田茂邸は、大磯町が町有施設として再建することとなり、工事中のようです。

↓残ったサンルームの右側が、本邸の再建工事現場となっていました。

大磯町HPによると、６億円の再建資金のうち、国からの交付金３億円を見込んでおり、再建基金は２億８千万円なので、２千万円不足しており、募金活動を行っているようです。

焼失を免れたものとしては、七賢堂があります。

元々、明治３６年に伊藤博文が、明治維新の元勲のうち岩倉具視、大久保利通、三条実美、木戸孝允の４人を祀った「四賢堂」を自身の邸宅「滄浪閣」に建てたものでした。

伊藤博文の死後、婦人により伊藤博文を加えた５人が祀られ、「五賢堂」となりました。

それが、昭和３５年に吉田茂邸に移設され、吉田茂が西園寺公望を合祀し、昭和４３年に佐藤栄作が吉田茂を合祀し、「七賢堂」となりました。

兜門やサンルームとともに、焼失を免れた旧吉田茂邸の歴史を感じさせる建築物です。

正面の扁額「七賢堂」の文字は、佐藤栄作元首相が書いたものですが、この流れだと、佐藤栄作氏は誰かが合祀し、「八賢堂」となるのを期待しているのではないでしょうか。

庭を奥のほうに歩いていくと、海沿いに銅像があります。

吉田茂氏の銅像で、日米講和条約締結の地、サンフランシスコと首都ワシントンの方角に顔を向けているといわれています。

銅像付近は眺望が良く、富士山、伊豆半島、相模湾などが一望できるとのことですが、この日は富士山は見えませんでした。

吉田茂は、戦後史にたびたび登場しますが、通算５期、６年２か月の渡り内閣総理大臣を務めました。

吉田茂邸には政界引退後も多くの政治家が「大磯参り」を行い、また、アナデウ アー元西ドイツ首相や、当時の皇太子殿下（今上天皇）と同妃殿下などの国内外の要人が招かれました。

吉田茂没後には、大平首相とカーター大統領の日米首脳会談が実施されるなど政治の表舞台としても利用されたといいます。

この辺りには著名人の邸宅や別荘が多いとのことですが、海沿いで景色もよく、気候的にも温暖で、この日も東京よりも気温が若干高かったような気がしました。

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