利根川の水を東京都の水道水に利用できる仕組みとしての利根大堰
東京都の水道水というと、都内にある奥多摩湖や多摩川のイメージが強いですが、実際には違っています。
多摩川水系は全体の2割ほどで、荒川や利根川水系が8割ほどを占めています。
↑その利根川の水を利用するために利根大堰があります。
埼玉県行田市と群馬県邑楽郡千代田町の境界にあります。
太平洋の利根川河口からは154キロの地点と言います。
確かに以前は多摩川に大きく依存していた東京の水ですが、昭和の高度経済成長期から増えていく水需要に応える必要が生じていました。
そこで昭和38年(1963)に利根導水路計画により、利根川の水を利用することとなりました。
↑利根川右岸側にある取水口を堰の下から上流に向けて見てみると、川幅も取水口も広いです。
この計画により、昭和40年(1965)に武蔵水路が完成し、昭和43年(1968)に利根大堰も完成しました。
↑堤防となっている土手の下を潜って、それぞれの水路に流れていきます。
これの無かった、前回の東京オリンピックが開催された昭和39年(1964)は、東京砂漠と言われるほどの渇水に東京は直面して大変だったそうです。
↑奥に見えていた水路を横断する道路から取水口の方を振り返って見ると、「須加樋管」と書かれています。
↓ここから南に向けてはいくつもの水路に分かれていきます。
水資源機構の利根導水総合事業所のHPによると、利根導水路事業の目的は大きく3つあります。
右から「見沼代用水路、武蔵水路、埼玉用水路、邑楽用水路」と書かれています。
目的の1つ目は、利根川上流のダム群により開発した都市用水を、武蔵水路及び荒川を経由して東京都・埼玉県に導水することです。
2つ目は、利根川中流部に展開する29000ヘクタールの水田に安定的に灌漑用水を供給することです。
3つ目は、緊急かつ暫定的に利根川の余剰水を取水して隅田川の河川浄化を行うことです。
↑利根大堰は691.7メートルもの堰長があり、上部は埼玉県と群馬県を結ぶ道路となっています。
この利根大堰で取水されたうち、武蔵水路は14。5キロメートルの長さがあり、行田市、鴻巣市を流れ、吉見町の総合運動公園近くで荒川へと流れつきます。
この水路のお陰で、東京都の水道水に利根川の水を利用することが出来るのです。
↑右岸埼玉県側に「大堰自然の観察室」へと降りていく階段があります。
ここでは魚が魚道をのぼっている姿を見ることができると言います。
中には3つの窓があり、真ん中の窓では遡る魚を見ることが出来そうです。
5月頃には小さなアユを、11月から12月にはサケを見られるのですが、暑い夏の日には何も見られませんでした。
↑帰り道に通った9キロほど離れた、行田市堤根交差点横の堤根新橋からの武蔵水路です。
平成22年度(2010)から27年度(2015)まで、通水能力の回復や水路全体の耐震化工事が行われ、2つの水路となっています。
現在では、東京都水道局の約4割、埼玉県企業局の約8割の給水エリアに水道用水を送水しているというから、この水路には感謝しなければいけません。
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